【大学生女子】大学の女子トイレが危険になる⁉︎【必読】中編

ｃ調査官は，同年１１月２日に原告と行った面談において，ガイドライン第３版の上記エの記載内容を踏まえ，原告が女性職員として勤務することを希望している理由等を尋ねたところ，原告は，ガイドライン第３版を作成した日本精神神経学会性同一性障害に関する委員会の委員であるｅ医師（中略）が，職場において女性としての実生活経験を積むべきであるとの意見を述べている旨を回答した。また，原告は，当該面談において，１年以内ではなく，二，三年後に性別適合手術を受けることを想定している旨を述べた。（中略）ｅ医師の「職場への説明としては、「私生活」はあくまで最低限の条件であって、原則はやはり職場でも望みの性別で送ることが求められる、と言う見解を伝えればと思います。」といった意見や，ｎメンタルクリニックのｆ医師の「プライベートな時間のみではなく、職場においても実生活経験を行うべき。」といった意見を伝えた。

p7下　（引用１）（引用多いので番号ふっていきます）

原告については， 女性ホルモンの投与により，「性衝動に基づく性暴力の可能性は低いと判断される」ことなどが記載されていた。

p8下　（引用２）

 秘書課は，本件各要望事項への対応を検討し，次のとおりの内容の方針案を策定した。（中略）性同一性障害者特例法第３条第１項第5 ４号及び第５号に規定する要件を満たすためには性別適合手術を受ける必要があること，ガイドライン第３版においては性別適合手術を実施するための条件として希望する性別での実生活経験が必要とされていること，そのため原告が本件各要望事項の実現を望んでいることなどが記載されていた。

ｐ９　１～９段　（引用３）

同年６月から７月にかけて，秘書課は，本件各要望事項への対応を検討し，次のとおりの内容の方針案を策定した。（中略）性同一性障害者特例法第３条第１項第5 ４号及び第５号に規定する要件を満たすためには性別適合手術を受ける必要があること，ガイドライン第３版においては性別適合手術を実施するための条件として希望する性別での実生活経験が必要とされていること，そのため原告が本件各要望事項の実現を望んでいることなどが記載されていた。（中略）

１．の要件を満たす者については、２．の対応を採ることとする。

１．性同一性障害者として対応すべき者の要件

(1) 専門医により性同一性障害と診断されており、かつ健全な仕事を行うためには職場において女性(男性)としての扱いが必要であると診断されていること。

p9　12～14段　（引用４）

女子(男性)休息室の使用については、使用して差し支えない。

p9　24段目　（引用５）

もっとも、原告が所属しているＪ室から離れた階の職員に対しては日常的な会話等の中で原告の身体的性別又は戸籍上の性別に関する情報が明らかになる可能性が低く、こうしたトラブルが生ずる可能性が低くなるといえる。そこで、経産省は、こうしたトラブルを避けるために、原告に対してＪ室から２階以上離れた階の女性用トイレの使用を認めつつ、本件トイレに係る処遇を行っているものである。このような対応は、庁舎管理の責任者である経産省において果たすべき上記の責務を遂行した合理的な判断といえる。

p10　（引用６）

原告が性器部分に係る皮膚アレルギーが原因で性別適合手術を受けることができない状態

ｐ91　（引用７）

原告が皮膚アレルギーのため性別適合手術を受けられない状態であることを知ったことから，原告に対し，皮膚アレルギーの原因となっているという歯の詰め物の除去を「いつになったら実施するのか明示してほしい」という趣旨の発言をしたものである。

p36　（引用８）

自己の性別に関する認識（性自認）とは，飽くまでも，基本的に個人の内心の問題であり，自己の認識する性と異なる性での生き方を不当に強制されないという意味合いにおいては，個人の人格的な生存と密接かつ不可分なものといい得るとしても，（中略）自由に自己の認識する性の使用が当然に認められることにはならない。そして，自らの性自認に基づいた性別で社会生活を送ることや，個人がその真に自認した性別に即した社会生活を送ることができることという利益についても，個人の内心の問題にとどまらず，社会生活を送ることを通じ，他者との利益調整・衝突等が不可避な事項が含まれる概念であり，（中略）それが問題となる生活場面によって異なり得ることは当然であり，その検討に際しては，社会通念や利益調整を要する他の利益，例えば本件のようにトイレ利用の場面に即せば，性同一性障害者等のトイレ利用に係る社会通念や女性用トイレを利用する女性側の利益との調整を要することは当然である。

p３　（引用２－１）

ガイドライン第３版は，性同一性障害の歴史を検証するなかで，性同一性障害者の示す症状は多様であることが明らかとなったとし，「この多様性は，『生をどのように生きるのか』，そして『性をどのように生きるのか』という価値観ないし人生観の違いに由来する部分が大きいことが明らかになった。これは侵すことのできない基本的人権に属するものであって，可能な限り厳に尊重されるべきであると認識される。」とし，「医療においては，患者側に医療選択の自由がある。従って治療法ならびに医療機関は，基本的に患者が自由に選択できることは自明である。」とした上で，治療は，「精神科領域の治療（精神的サポート）と身体的治療（ホルモン療法とＦＴＭにおける乳房切除術，性別適合手術）で構成される。

p７　（引用２－２）

治療は画一的にこの治療の全てを受けなければならないというものではない。身体的治療については，治療に関する十分な理解を前提としたうえで，自己の責任において，どのような治療をどのような順番で受けるかを自己決定することができる。ただし，診断の手続きと精神科領域の治療を省略することはできない。」とし，精神科領域の治療の内容と手順として，〔１〕精神的サポート（現病歴の聴取と共感および支持），〔２〕カムアウトの検討，〔３〕実生活経験（ＲＬＥ），〔４〕精神的安定の確認を定め，〔５〕治療は上記〔１〕～〔４〕の条件を満たすことを確認できるまでの期間行う，

p７　（引用２－３）

(RLEとは)いずれの性別でどのような生活を送るのが自分にとってふさわしいのかを検討させる。また既にどれだけ実現できているか、（略）実現に向けての準備や環境作りを行わせる。（略）周囲との関係に悪影響を及ぼさない範囲（略）でもよいであろう。本人の適応能力や周囲の許容範囲を超えないように細心の注意を払う必要がある。

ガイドライン第３版p14より

注：たとえば、本人の望む生活を試みるなかで、周囲の好奇の目に曝されることへの耐性も必要である。

ガイドライン第３版p16より

検討するに，性別は，社会生活や人間関係における個人の属性の一つとして取り扱われており，個人の人格的存在と密接不可分のものということができる。他方，性同一性障害者は，生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず，心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち，かつ，自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって，そのことについて医学的知見に基づく医師の診断を受けていることから（性同一性障害者特例法第２条参照），自己の身体の性的徴表と性自認との矛盾・相克に悩むとともに，社会生活上様々な問題を抱えている状況にあり，（中略）入学や就職等の場面で，性同一性障害者であることが露見することで，いたずらに好奇の目にさらされたり，差別を受けるなどの問題が生じていた。

p８　（引用２－４）

そこで，（中略）性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判を認めることによって，上記のような性同一性障害者の社会的な不利益を解消するために，制定されたものと解される。このような，性同一性障害者特例法の立法趣旨及びそもそも性別が個人の人格的生存と密接不可分なものであることに鑑みれば，一審原告が主張の基礎とする自らの性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは，法律上保護された利益であるというべきである。

p8　（引用２－５）

Ａ調査官は，（中略）秘書課の顧問弁護士から，組織としての姿勢について，（中略）「組織としては、広い意味でのセクハラを防止する必要があり、他の職員が不快と思い組織として対応できないことについては本人に我慢してもらう必要がある。本人の権利の主張もあるが、他の職員、特に女性職員の保護が重要。」との助言を受けた。また，本件各要望事項のうち女性用の休憩室及びトイレの使用については，「男性である限り、女性には危険が及ぶおそれがあることから休息室・トイレの使用は認めるべきではない（女性職員が被害者になるおそれがある）。」，「トイレは個室になっているので男性用トイレで我慢してもらうか、男女共用トイレや身障者用トイレの使用を促す。」等の助言を受けた。

p10　（引用２－６）

一審原告は，経産省において，一審原告がその性自認に基づく女性トイレを使用することについて違和感を持つ職員がいるとすれば，経産相自身がそれら職員に対して，性自認に基づいた性別で社会生活を送ることが憲法１３条等によって保障された人格権に基づく権利であることを説明し，一審原告の権利を保護すべきである旨主張するところ，そのような取組が重要であることは論を待たないが，他方，経産省としては，他の職員が有する性的羞恥心や性的不安などの性的利益も併せて考慮し，一審原告を含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を負っていることも否定し難いのであり，（中略）経産省において本件トイレに係る処遇を実施し，（中略）維持していたことは，上記の責任を果たすための対応であったというべきである。

p14　（引用２－７）

経産省は，なお一審原告の上記要望にできるだけ沿い，かつ一審原告の周囲にいる女性職員らの理解を求める形で調整を図るべく，本件説明会を行い，一審原告も同説明会に参加して自身の性自認とトイレ利用の願いを参加者に訴え，その後一審原告が退席した後に出された女性職員からの意見を踏まえて上記処遇を決めたものであり，〔５〕上記処遇では，経産省内の一部のフロア（中略）にあるトイレ使用が制限されたものの，他のフロアの女性トイレの使用は許され，それについて使用時間等が制限された事実もなかった，（中略）平成２６年３月７日付けで人事院に対する要求事項としてトイレの使用を明示したが，これ以前に一審原告が上司に異議を申し出るなど上記処遇について不満を述べた事実はなかったのである。

p15　（引用２－８）

職場での生活は人生で大きな割合を占めているところ，職場においても性自認に基づいて行動したいという気持ちは，性同一性障害者特例法第３条第１項に規定する性別の取扱いの変更の審判を受けていないトランスジェンダーである一審原告の真意及び真情に基づくものであると理解できるが，職場においても幸福でありたいとする気持ちはそこに属する誰しもが有するものである。長年の時間の経過はあるにしても，（中略）一審原告の上記主張は採用することができない。

p15下　（引用２－９）

女子更衣室・休憩室の使用が許されており，そこでは着替え等の衣類の着脱が想定されていることからすれば，一般健康診断のみを時間を指定する方法によって制限することに合理的な理由はない旨主張する。

しかし，一般健康診断において他の女性職員と同じ時間帯に健康診断を受けることを認めない処遇が国家賠償法第１条第１項の違法性があるというためには（中略）一審原告の主張する健康診断における処遇は，一審原告を含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を負っている経産省において，一審原告の性自認に基づく利益に加え，他の職員が有する性的羞恥心や性的不安などの性的利益も併せて考慮し，（中略）公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情が存在するとはいい難い。よって，一審原告の上記主張を採用することはできない。

p16　（引用２－１０）

（戸籍上の性別変更をしない限り，異動先の女性職員に性同一性障害者であることをカミングアウトしなければ，異動先で女性用トイレの使用を認めない旨の一審原告の主張に係る処遇が違法なものとして認められるかどうか）について

一審原告は，（中略）異動先でカミングアウト（説明会を含む）をしなければ異動先部署の女性用トイレの使用を認めないとすることは，一審原告の人格権・プライバシー権・自己情報コントロール権を侵害し，一審原告に対するセクシャルハラスメントに該当し，人格権（憲法１３条），平等原則違反（憲法１４条），障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律７条２項に違反し，違法な処遇であるといわざるを得ない旨主張する。

しかし，一審原告の主張する処遇は，一審原告を含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を負っている経産省において，一審原告の性自認に基づく利益に加え，他の職員が有する性的羞恥心や性的不安などの性的利益も併せて考慮し，検討した結果策定された対応方針案に基づくものであることからすれば，経産省の一審原告に対する処遇が公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と実施されたと認め得るような事情が存在するとはいい難い。

よって，一審原告の上記主張を採用することはできない。

p17　（引用２－１１）

一審原告は，当審において女性用トイレを使用することが痴漢や建造物侵入に当たらない旨主張し，そのこと自体が直ちに痴漢や建造物侵入に当たらないことは当然であるが，（中略）他の職員が有する性的羞恥心や性的不安などの性的利益も併せて考慮し，（中略）漫然と実施されたと認め得るような事情が存在するとはいい難い。

p20上　（引用２－１２）

一審原告の各要望事項に対する対応方針を策定し，本件トイレに係る処遇を行ったと認められるところ，これは，トランスジェンダーによる自認する性別のトイレ等の利用等に関して具体的に定めた法令等による指針がない中で，経産省が一審原告の要望や一審原告の主治医らの意見，経産省の顧問弁護士の意見等を参考にしつつ，一審原告の希望を十分考慮した上で結論を導いたものというべきであり，（中略）経産省がした上記判断がその裁量を超えるものとはいい難い。

p22　（引用２－１３）

性別の取扱いの変更の審判を受けていないトランスジェンダーに対するトイレの利用については，今なお所属する団体や企業の裁量的判断に委ねられていると認められこれらのことからしても，（中略）一審原告を含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を負っている経産省の裁量権につき，逸脱又は濫用があったとはいえない。

p23　（引用２－１４）