ブチギレ読書シリーズ『誰かの理想を生きられはしない』 吉野靫

反TGism

『誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー史』吉野靫 青土社
あっさり読書感想文です

『われらはすでにともにある』の『ご機嫌いかがですか』が「あなた」に向けた手紙形式だったので、この「あなた」が誰なんだろうと思って読んだ。結論から言うと分からなかった。病院に付き添ってくれた友人?家族?以前の著作を読んでくれた読者??Xの投稿によると「昔は活動してたんだけど…若いときは頑張っていた…と思うことがある同世代の方へ」らしいです。

「古代遺跡から男性の骨が発掘された、というニュースなどを聞けば、『もしかしたら女性として生きていた人かもしれない。数千年あとになって暴かれるなんて嫌だな』と考えたりする。(p9)」どれほど嫌でも死んでも性別は変わらないということですね…。個人的にはこの事実を受け入れないとずーーっと苦しむんじゃないかと思うんですが。

乳房切除手術に失敗したとのことだが、失敗が発覚するまで「これは壊死では?」と聞いても「壊死ではない」とされ、最終的には「やっぱり壊死でした」とやりとりしてて怖い。どうやら同様の手術を受けた後、修正手術を受ける人がいるとのこと。納得していない、直してほしいけど言えないって人はもっといても不思議ではないと。男性医師は女性患者の話を聞かないという話がありますが、吉野さんも女じゃなかったらこんなに医者にぞんざいに扱われなかったんじゃないかと思ってしまう。

乳房切除手術失敗を訴えた裁判でも、相手方に不誠実な対応されたよう。最初から手術しなければ裁判もしなくてよかったのに…いや、そもそも健康な身体にメスを入れるという選択肢があるのがおかしいんですが。もう自分と同じようなことがあってはいけないと思うなら、乳房切除手術自体に、特に未成年にも手術している現状に一緒に反対してほしい。

戸籍の性別変更の子なし要件について、「自らを「矯正」しようとして子どもを持つ当事者も少なくない(p42)」と書いていて、それはひどくないか!?性別変更云々の前にさあ!!人としてさあ!!保護者同士の付き合いが困難になるとかとかさあ!!責任持って背負いな!!

埼玉医大でSRS受けた女性、女声が嫌で喉を金串で刺してたらしいけど、それ、必要だったのは本当にSRSなんでしょうか…。メンタルの問題では…?

ドラマ『ごめんね青春!』『ラスト・フレンズ』にトランスジェンダーの描写があるらしい。『金八先生』にも上戸彩さんが性同一性障害の生徒の役で出ていたと聞いたことがあります。ほかにも探せばあるんでしょう。どういう経緯で描写を盛り込むことになったのか気になります。

FTM戸籍と引き換えに健康を失いましたというブログを知りました。読んでて、かわいそうでちょっと苦しくなります。

女性差別を列挙して、「そのようなとき、悲しみや怒りを『女性』という存在そのものに向けると、単純な女性嫌悪に陥ってしまう。女性に見えるからこんな目に遭うのだ、早く性別移行すべきだ、というふうに自分を追い詰めないでほしい。『女性に見える人』を不当に扱ってきた、世の中の仕組みの方に目を向けてほしいのだ。(p199 おわりに)」と書いてますが、よく分かってるじゃないですか、変えるべきは身体じゃなくて社会であることを(この文章まだいろいろツッコミどころはあるけど)。

でもじゃあなんで身体を改造しちゃったんでしょう。そうは言っても本当は逆の考えが染みついて離れないんじゃないですか?「女性に見えるからこんな目に遭うのだ」と。

「女性に見えるからこんな目に遭うのだ」は半分正しい。でもそれは女性差別があることが悪いのであって、女性に見えることも、女性らしい身体をしていることも、女性に生まれたことも悪くない。身体にメスを入れて苦しむ必要なんてない、社会のほうがメスを入れられて苦しんででも変わるべきなんです。まあ、現状こんな女性差別がひどい社会じゃ「女」をやめたくなるかもね…。ともかくお大事にしてほしい。

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